Research

〔現在の研究テーマ〕

昔からゆとりをなくして人に迷惑をかけがちだったためか,人はなぜゆとりをなくすのか?に関心を持ったのが心理学を志すきっかけでした。

ゆとりをなくすというのは,人の感情,行動,認知の相互作用であることが修士論文の研究で分かりました。

そして,どうやら,理性は感情には敵わないことが分かってきました。

感情を制御するのではなく,うまくつきあっていくしかない・・・

感情とのつきあい方を身につける方法としてマインドフルネスに出会いました。

マインドフルネストレーニングや瞑想をすると,なぜ感情とうまくつきあえるのか?
そもそも,感情とうまくつきあう,とはどういうことか?

それをさぐる内に,感情と関わる認知プロセスの面白さが分かってきました。

そして,その認知プロセスの働きは,マインドフルネスだけでなく,我々の日常生活に大きく関わっていることが分かってきました。さらに,それこそが認知療法の効果の核であることが分かってきました。

その認知プロセスというのが,いわゆる「distancing」です。

これは,ただ距離をとればよいのではありません。自ずと距離がとれる状態を意味します。「とる」のではなく,「とれる」のです。

じゃあ,どうすれば距離をとれるようになるのか?
距離をとるとなんでいいのか?

その疑問の答えをさぐることは,認知療法における「認知再構成技法の効果のメカニズム」をさぐるのと軌を一にしているようです。

ただ対象(感情)を見つめ続ければ距離がとれるようになるわけではない。「腑に落ちる理解」が生じるような洞察が必要です。そうした深い理解を得るためには,「身体」を通した理解が有効なようです。また,洞察が得られるプロセスでは,どうやら「壁にぶち当たる経験」が不可欠のようです。

そして,感情と,どのような関係を気づくのか。「コンパッション」や「イクアニミティ」がその中核にあるようです。

こういうことを勉強すればするほど,実は,その答えはすでに原始仏教の仏典の中に書かれていることが分かってきました。原始仏教の考え方を歴史の洗練を受けた一つのエビデンスと捉え,今後は益々視野を広げて実証的研究を積み重ねていきたいと思います。

また,こうした研究の成果を社会に役立てていきたいと思います。

どんな人でも,人が苦しむメカニズムは同じです。そのメカニズムにアプローチするマインドフルネスは,どんな人の役にも立つはずです。

臨床実践を行っている特別支援や少年院での矯正教育にも役立ちますが,研究分野として今取り組んでいるのは「いじめ予防教育」です。

主にコンパッションを柱にしながら,教育活動の中に自然と溶け込むプログラムの開発と効果の検証を行っています。

〔科研費〕

H16~17年度 若手研究(B) 研究代表者 課題番号:16730356 心理療法の効果を規定するクライエントの内的要因に関する認知臨床心理学的研究
H18~21年度 基盤研究(C) 研究代表者 課題番号:18530538 慢性疼痛患者に対するマインドフルネスに基づく集団認知行動プログラムの開発
H22~25年度 基盤研究(C) 研究代表者 課題番号:22530746 瞑想に頼らない新しいマインドフルネスに基づく認知行動プログラムの提案と効果の検討
H26~29年度 基盤研究(C) 研究代表者 課題番号:26380932 コンパッションに基づくいじめ予防教育プログラムの開発と普及

H23~24年度 基盤研究(C) 分担研究者 課題番号:23530901 マインドフルネスと幸福感および心配との関連の研究
H26~28年度 基盤研究(C) 分担研究者 課題番号:26380929 マインドワンダリングと幸福感:価値とマインドフルネスによる調整効果

〔その他の研究費〕

H26年度 笹川記念保健協力財団 2014年度 ホスピス緩和ケアに関する研究助成 研究代表者 ホスピス緩和ケアに従事する支援者のためのマインドフルネストレーニングプログラムの開発と効果の検討
H26年度 琉球大学後援財団助成金 平成26年度 教育研究奨励事業 「琉球大学が主催するシンポジウム等及び琉球大学教員が責任者となって沖縄で開催される学会等支援」 申請代表者 認知・行動療法コロキウム'14 in 宮古島の開催

〔その他〕